2006-05-15 作成
天城山隧道(静岡県)
静岡県伊豆半島にある天城山隧道は川端康成作「伊豆の踊子」を初め
数々の文学作品に登場する有名な隧道である。
それだけではなく坑門を初めとする隧道内の巻き立てまで
全てが石積で作り上げられている珍しい隧道でもある
今回はその隧道のレポートである。
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静岡県下田市と沼津市を結ぶ国道414号線
その途中にある天城峠で旧道入り口に入る。
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旧道入り口に設置された道路情報板
国道旧道に残る道路情報板は大体「死んでる」ものなのだが
ここのは通電され生きている。しかも丁寧に旧道の文字まで入っている。
旧道と位置付けられられてはいるが、この道は恐らく
現道以上に大切にされているのだろう・・
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天城山隧道の河津町坑門
隧道内部はきれいに掃除され、白熱電球で
当時の雰囲気を損ねない程度に照明設備も設置されている
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坑門付近の石碑
隧道の由来や重要文化財指定の経緯が記されている
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石碑横には隧道の細部詳細を書いた看板も設置されている
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外部を一通り観察した後にいよいよ入坑してみる
噂に聞く石積み隧道・・煉瓦巻きとは違う独特の雰囲気がある。
ここで気がついたがこの隧道は側壁部分とアーチ部分で
若干石の形が違うようである。
なおお気づきだろうが明治隧道、しかも石巻隧道なのに痛みが殆ど無いのである。
実は明治38年開通のこの天城山隧道は激しい漏水や巻き立ての石材劣化
また南伊豆と北伊豆を連絡する唯一の幹線県道(当時)と言うこともあり
松丸太で崩落を支えていたほどに老朽化を見せていた。
静岡県土木部は昭和23年、県の独自事業として痛みの激しい側壁部分を
一部コンクリート補強するなど対策を実施してきたが直接の原因である
漏水対策の根本的解決には至らず、応急処置でなんとかこの老朽化したトンネルを
騙し騙し持たせ続けて来た。
旧隧道の漏水対策としてとして巻替(内部の巻立を一度剥がし
防水処置をして巻き直す)工法と
内巻(現在の巻立の上に防水処置を施し、更に巻立を行う)工法があるのだが
前者工法は莫大な工費が必要になり、後者工法はトンネル内径の縮小を伴う。
僅かな県予算では巻替は出来ず、そして年々交通量が増加する幹線県道なので
トンネルを狭くする事も出来ない・・・
そこで静岡県は昭和26年8月25日、道路防災事業として
この老朽隧道の本格的な補修工事を始めた。
そして巻立を剥がさず、内径を狭めない方法として直接巻立裏の漏水箇所に
高圧でコンクリートを浸透させ漏水を防ぐ「グラウド工法」を採用した。
そう、知識ある人はご存じのダム工事で地盤を防水する「グラウチング」と同じである
これにより直接の老朽化原因である漏水を止めると共に目地が殆ど風化し
頻繁に剥がれ落ちていた巻立の石材を再度固定する事が出来た。
その補修工事により現在の美しい隧道を保っているのだった。
なお施工は水力発電、ダム等で実績のある熊谷組である。
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